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神戸地方裁判所 昭和62年(ワ)1015号 判決

原告(反訴被告)

亡山田雅雄承継人山田和子

ほか二名

被告(反訴原告)

細川勇

主文

一  原告ら(反訴被告ら)の被告(反訴原告)に対する別紙事故目録記載の交通事故に基づく損害賠償債務は、原告(反訴被告)山田和子について金八三万一〇六〇円、原告(反訴被告)山田高生同山田友子について各金四一万五五三〇円を越えて存在しないことを確認する。

二  反訴原告(被告)に対し、反訴被告(原告)山田和子は金八三万一〇六〇円、反訴被告(原告)山田高生同山田友子は各金四一万五五三〇円並びに右各金員に対する昭和六二年五月二〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告ら(反訴被告ら)及び反訴原告(被告)のその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを五分し、その二を原告ら(反訴被告ら)の負担とし、その三を被告(反訴原告)の負担とする。

五  この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

Ⅰ  本訴事件について

一  原告ら(請求の趣旨)

1  原告らの被告に対する別紙事故目録記載の交通事故に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告(請求の趣旨に対する答弁)

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

Ⅱ  反訴事件について

一  反訴原告(反訴請求の趣旨)

1  反訴原告に対し、反訴被告山田和子は金一九三万四〇〇九円、反訴被告山田高生同山田友子は各金九六万七〇〇四円並びに右各金員に対する昭和六二年五月二〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は反訴被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  反訴被告ら(反訴請求の趣旨に対する答弁)

1  反訴原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は反訴原告の負担とする。

第二当事者の主張

Ⅰ  本訴事件について

一  原告ら(請求原因)

1  別紙交通事故目録記載の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

2  被告は本件事故により負傷したと称して、昭和六二年五月二〇日から明芳クリニツクに通院し、同月二二日には入院するに至り、亡雅雄の相続人である原告らに対し、損害賠償請求権を有する旨主張している。

3  しかしながら、本件事故の態様、車両の損傷の程度に鑑みると、本件事故により被告に身体傷害が発生するはずはないから、原告らは被告に対し、本件事故に基づく損害賠償債務の各存在しないことの確認を求める。

二  被告(請求原因に対する認否)

請求原因1、2の事実は認める。

三  被告(抗弁)

1  本件事故が発生した。

2  責任原因

亡雅雄は、前方不注視の過失により本件事故を惹起したから、民法七〇九条により損害を賠償する責任があるところ、亡雅雄は昭和六三年八月一三日死亡したので、亡雅雄の損害賠償債務を、その妻である原告山田和子(以下「原告和子」という。)は二分の一、その子である原告山田高生(以下「原告高生」という。)、同山田友子(以下「原告友子」という。)は各四分の一宛相続により承継した。

3  受傷及び治療経過

被告は、本件事故により頸椎捻挫の傷害を受け、昭和六二年五月二二日から同年六月二九日まで三九日間明芳クリニツクに入院し、同年五月二〇日から同年一一月三〇日まで通院(実通院日数六五日間)して治療を受けた。

4  損害

(一) 治療費 金一六八万六四五五円

(二) 入院雑費 金五万〇七〇〇円

ただし、一日一三〇〇円の割合による入院三九日分

(三) 通院交通費 金一一万〇二〇〇円

(四) 休業損害 金五七万〇六六三円

被告は、本件事故当時株式会社フローラルツカサ(以下「フローラルツカサ」という。)に勤務し、一か月平均一七万八二三〇円の収入をえていたが、本件事故により、昭和六二年五月二〇日から休業を余儀なくされ、かつ、本件事故のため、同年六月三〇日には右フローラルツカサを解雇され、同年九月一日再就職するまでの間収入を得ることができなかつた。

(五) 慰謝料 金一一〇万円

(六) 弁護士費用 金三五万円

5  結論

よつて、被告は、原告和子に対し、金一九三万四〇〇九円、原告高生、同友子に対し、各金九六万七〇〇四円の損害賠償債権を有しているから、原告らの本訴請求は理由がない。

四  原告ら(抗弁に対する認否)

1  抗弁1の事実は認める。

2  抗弁2の事実は認める。

3  抗弁3(一)(二)の事実中、被告が本件事故により頸椎捻挫の傷害を負つたことは否認し、その余の事実は知らない。

本件事故の態様は、原告車両が停車直前に被告車両に追突したというものであるが、追突直前の原告車両の速度は時速五キロメートルを下回る速度であり、被告車両は右追突によつて全く移動しておらず、被告車両自体なんらの損傷も受けていないうえ、衝突の痕跡すら残つていない。さらに、被告車両の助手席及び原告車両の後部座席にそれぞれ同乗者がいたが、被告を除く同乗者及び亡雅雄はなんら傷害を受けていない。また、亡雅雄は本件事故後直ちに警察に赴き事故届けをしたい旨被告に申し入れたが、被告は多忙を理由に警察への同行を拒否し、その後何の支障もなく勤務を続けていた。

このように、本件事故により被告が受傷していないことは明らかというべきである。

4  抗弁4は争う。

Ⅱ  反訴事件について

一  反訴原告(反訴請求原因)

1  本訴事件の抗弁1(第二・Ⅰ・三・1記載のとおり。)と同じ。

2  本訴事件の抗弁2(第二・Ⅰ・三・2記載のとおり。)と同じ。

3  本訴事件の抗弁3(第二・Ⅰ・三・3記載のとおり。)と同じ。

4  本訴事件の抗弁4(第二・Ⅰ・三・4記載のとおり。)と同じ。

5  よつて、反訴原告は、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、反訴被告山田和子に対し、金一九三万四〇〇九円、反訴被告山田高生同山田友子に対し、各金九六万七〇〇四円と右各金員に対する本件事故発生日である昭和六二年五月二〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合にによる遅延損害金の支払を求める。

二  反訴被告(反訴請求原因に対する認否)

1  本訴事件の抗弁に対する認否1(第二・Ⅰ・四・1記載のとおり。)と同じ。

2  本訴事件の抗弁に対する認否2(第二・Ⅰ・四・2記載のとおり。)と同じ。

3  本訴事件の抗弁に対する認否3(第二・Ⅰ・四・3記載のとおり。)と同じ。

4  本訴事件の抗弁に対する認否4(第二・Ⅰ・四・4記載のとおり。)と同じ。

第三証拠

本件記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第一本訴事件について

一  請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない。

二  抗弁1(本件事故の発生)、同2(責任原因)の各事実は当事者間に争いがない。

三  そこで、被告が本件事故により受傷したか否かについて検討する。

いずれも成立に争いのない甲第一ないし第八号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一号証の一ないし四、乙第七、第九号証、昭和六二年五月二五日撮影された被告車両の写真であることにつき争いがない検甲第一号証の一、二、同日撮影された原告車両の写真であることにつき争いのない甲第二号証の一、二、証人鄒博馨の証言、被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

1  被告は株式会社フローラルツカサに勤務し、花の配達等の業務に従事していたものであるが、本件事故当日、助手席に上司を乗せて被告車両を運転し右配達の途中、信号待ちで停止中、後部からタクシーである原告車両に追突された。すなわち、亡雅雄は、乗客を乗車させて本件現場付近道路を東から西に向けて原告車両を運転中、前方注視不十分のため、前方約九・八メートルの地点に至つてはじめて停車中の被告車両を認め、危険を感じ、急制動の措置をとつたが及ばず、同車右前部を被告車両左後部に衝突させた。衝突後原告車両は約〇・二メートル、被告車両は約〇・五メートル各前進して停止した。

2  本件現場道路の状態、原告・被告車両の重量、搭乗者、右衝突による車両の損傷状況等は、次のとおりである。

(1) 本件現場道路 アスフアルト舗装道路(平垣・乾燥)、原告・被告車両進行方向に一〇〇分の七の昇り勾配

(2) 原告車両 普通乗用自動車 車両重量一一七〇キログラム、車両総重量一五〇〇キログラム。

右ヘツドランプ破損、右前フエンンダー凹損(修理見積額 右ヘツドランプ取替・フロントマスクパネル板金修理・塗装等合計金二万円)

搭乗者 亡雅雄・乗客

(3) 被告車両 普通貨物自動車 最大積載量三五〇キログラム

左テールランプ付近に肉眼でようやく確認できる程度の凹損、深さ二、三ミリメートル程度。修理していない。

搭乗者 被告・被告の上司

3  本件事故当時の被告の姿勢、動静、事故後の経過等に関する被告本人の供述は次のとおりである。

(1) ギアーはニユートラル、サイドブレーキを引いていたがフツトブレーキから足は離していた。シートベルトを着用していた。

(2) かがみ込むようにして、上半身をひねり右肩・背中をハンドル側に向け助手席のほうを下から覗き込む姿勢で上司と話をしていた。衝突の衝撃により、三、四回身体が前後に揺れてダツシユボード上の書類等が下に落ちた。大きいバイクがノンブレーキで突つ込んできたような感じがした。

(3) 事故後、花の配達をすませ、会社に寄つた後、明芳クリニツクに行き、首痛・頭痛を訴えたところ、首のレントゲン撮影をみた医師から普通の人のそれと違うから鞭打ち損傷であり入院するようにと言われた。当日の夜は頭痛がひどくてよく眠れなかつた。翌日同クリニツクで診察を受け会社に迷惑をかけたくなかつたので様子をみたが、翌五月二二日入院した。入院時と比較して退院時にはあまり症状は変つていない。退院後通院を続けてリハビリ治療を受けだいぶ良くなつた。

4  入・通院経過等

(1) 被告は、頸椎捻挫の傷病名で、昭和六二年五月二〇日と二一日に明芳クリニツクに通院し、同月二二日から同年六月二九日まで三九日間同クリニツクに入院し、同月三〇日から同年一一月三〇日まで(実通院日数六三日。通院実日数合計六五日間)通院して治療を受けた。

(2) 同クリニツク医師作成の診断書上の症状・治療経過等の記載は次のとおりである。

「初疹時頸部痛・頭痛・吐き気・著明なる頸椎運動制限を認め入院加療となつた。理学療法中心に加療中」昭和六二年六月一〇日付

「頸椎捻挫のため昭和六二年五月二〇日初診。入院五月二二日より六月二九日まで。その後通院加療中であることを認める。」昭和六二年七月二二日付

「六月二九日症状軽快につき退院。後、理学療法中心に外来加療中である。」昭和六二年九月一日付

「頸椎捻挫 鞭打ち症状改善せず理学療法中心に加療」昭和六二年一二月一〇日付

(3) 被告の入・通院中の症状・治療経過に関する診療録・看護日誌等の記載は次のとおりである。

傷病名 頸椎捻挫

初診時 頸痛・頭痛・吐き気・頸椎運動制限(後屈)あり。ネツクカラー及びX線撮影(頸部)。

その後の記載 牽引一〇キログラム、運動B(マツサージ・低周波治療等)を五月二一日から開始(以降もほぼ同様の牽引を続けている)。頸部痛・右後頭部圧痛著明・吐き気プラス。看護記録による愁訴(主訴 頭部痛・頭痛・吐き気軽度)頭痛、腹痛、下痢、不眠、吐き気軽度、頸部痛、腰痛、全身倦怠感、右肩こり。牽引その他の理学療法のほか、星状神経ブロツク注射、筋肉弛緩剤・抗炎症剤注射等の治療が続けられた旨

入院時安静指示の記載はあるが、他方で牽引を続けている旨の記載がある。

六月一二日付神鋼病院医師作成の被告の症状を診察報告した書面(明芳クリニツク宛のもの。)バレー症状あり、握力右二五キログラム左三〇キログラム、項部神経・肩・部筋肉の緊張あり

四  右三1ないし4認定事実を前提に検討する。

1  右三1認定の本件事故状況、同三2(2)認定の原告・被告車両の損傷状況によると、本件事故による衝撃はさほど強度のものではなかつたものと窺われるところ、被告が事故後ただちに病院に行かず花の配達業務を済ませていること、関係車両の被告を除く三名の乗員はいずれも治療を要するような傷害を被つていないこと等をも考慮すると、被告にその主張の傷害が生じたものか否かについて疑問がないわけではない。しかしながら、被告の供述する事故時の受傷姿勢(右被告の供述には不自然な点はない。)、本件事故現場道路が昇り勾配の道路であること、本件事故の衝撃により被告車両は五〇センチメートル前方に移動していること、事故後被告に頭痛・頸部痛・吐き気等の症状が発現した旨の被告の供述には特段不自然な点はないこと等を勘案すると、その程度や本件事故と相当因果関係を認めるべき入・通院期間の長短はともかくとして、本件事故により被告は頸椎捻挫の傷害を被つたものと認めるのが相当である。

2  他方、右のとおり本件事故による衝撃の程度がさほど強度のものとは窺われないこと、被告を除く関係車両の搭乗者には傷害は発生していないことに加えて、前認定の入・通院、治療経過によれば、被告の症状は、頭痛・吐き気等の自覚症状・自律神経症状がほとんどであつて他覚的異常所見はないうえ、入院中、下痢・下腹部痛など本件事故と関連のない症状も再三にわたり出現していること、治療の前提として必要と思われる受傷状況の詳細な聞き取りをすることもなく、レントゲン検査の結果のみで鞭打ち損傷であると断言し(明芳クリニツクの担当医師である鄒博馨の供述によると、レントゲン検査により頸部の生理的前弯の不十分さが認められたからというのであるが、同供述によつても、右は被告に首の痛みによる頸部筋肉の緊張が認められたというにすぎず、首の痛みの訴えに客観性があつたにすぎない。)、安静を命じながら並行して牽引療法を施行するなど、治療にあたつた医師には、事故後の患者の過度の精神的不安を取り除く配慮が不十分で、やや過剰ないし遷延診療と評しうる診療態度をとつたものと窺われること等に鑑みると、前記三4(1)認定の入・通院の長期化は、傷害の程度のほかに、被告の性格ないしは心因的要素や、漫然と治療を継続した担当医師の態度なども寄与しているものと認めるのが相当である。

従つて、右認定の諸事情を総合勘案し、本件事故による被告の傷害の治療としては、長くとも二週間の入院治療(経過観察及び安静保持のため)とその後六週間の通院治療をもつて本件事故と相当因果関係のある治療と認めるのが相当である。

五  損害

1  治療費 金八四万円

弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第二号証の一、二及び乙第八号証(乙第一〇号証は乙第八号証と同一の診療報酬明細書である。)によれば、前記三4(1)認定の三九日間の入院治療と約五か月間(実通院日数六五日間)の通院治療の治療費は、合計一六八万六四五五円であることが認められる。そして、前認定のとおり、本件事故と相当因果関係を認めるべき治療は、入院二週間(一四日間)と通院六週間(四二日間。実通院日数二〇日程度)に限定されるべきものであるところ、右金一六八万六四五五円の約二分の一にあたる金八四万円をもつて本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

2  入院雑費 金一万八二〇〇円

前認定の本件事故と因果関係を認めるべき一四日間の入院雑費としては、一日一三〇〇円の割合で計算した金一万八二〇〇円をもつて相当と認める。

3  通院交通費 金一万一二〇〇円

前認定の本件事故と因果関係を認めるべき六週間(四二日間。実通院日数二〇日)の通院交通費としては、一日金五六〇円(被告本人尋問の結果によれば、被告の自宅から明芳クリニツクへの通院にはJRを利用し、その一回あたりの往復料金は金五六〇円であると認められる。)の割合で計算した金一万一二〇〇円をもつて相当と認める。

4  休業損害 金三四万二七二〇円

前認定のとおり、被告は本件事故当時株式会社フローラルツカサに配達員として勤務していたものであるところ、被告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第五号証によれば、一日平均六一二〇円の収入を得ていたことが認められる。そして、被告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第六号証並びに被告本人尋問の結果によれば、被告は昭和六三年六月三〇日右会社を解雇され同年九月ころ再就職するまで就労していないことが認められるけれども、前認定のとおり、本件事故と因果関係のある入院は二週間、通院は六週間をもつて相当とするから、本件事故による休業期間としては、右治療の終了までの八週間(五六日間)をもつて相当と認める。従つて、本件事故と相当因果関係のある休業損害は、一日六一二〇円の五六日分合計金三四万二七二〇円となる。

5  慰謝料 金三〇万円

前認定の本件事故の態様、被告の傷害の部位・程度、入・通院期間、治療経過その他本件にあらわれた諸般の事情を総合考慮すると、本件事故により被告が被つた精神的苦痛を慰籍すべき慰謝料としては、金三〇万円をもつて相当であると認める。

6  弁護士費用 金一五万円

被告が弁護士である被告訴訟代理人に本件訴訟を委任していることは本件記録上明らかであり、相当額の着手金・報酬を右代理人に支払うべきことは弁論の全趣旨により認められるところ、本件訴訟(反訴事件を含む。)の内容、経過、立証の難易、認容額等諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある損害として原告らに請求しうべき弁護士費用は金一五万円をもつて相当であると認める。

六  本訴事件のまとめ

以上の事実によれば、本件事故について、被告は亡雅雄の相続人である原告らに対し、右損害金合計金一六六万二一二〇円(原告和子に対し、その二分の一にあたる金八三万一〇六〇円原告高生同友子に対し、その各四分の一にあたる各金四一万五五三〇円)の各損害賠償請求権を有するから、被告の抗弁はその限りで理由がある。

よつて、原告らの本訴請求は、被告に対する本件事故による損害賠償債務元本は、原告和子については金八三万一〇六〇円原告高生同友子については各金四一万五五三〇円を越えて存在しないことの確認を求める限度で理由があるからこれをそれぞれ認容し、その余の請求は理由がないからこれをそれぞれ棄却することとする(原告らの本訴請求は量的な債務不存在確認をも含むものと解する。)。

第二反訴事件について

本訴事件の理由中に記載のとおり、反訴原告は、民法七〇九条に基づき、本件事故による損害金として、反訴被告山田和子に対し金八三万一〇六〇円、反訴被告山田高生同山田友子に対し各金四一万五五三〇円と右各金員に対する本件事故発生の日である昭和六二年五月二〇日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める権利がある。

よつて、反訴原告の反訴請求はその限度で理由があるからこれをそれぞれ認容し、その余の請求は理由がないからこれをそれぞれ棄却することとする。

第三結論

以上の次第であるから、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条、九二条を、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 杉森研二)

事故目録

発生日時 昭和六二年五月二〇日午後一時ごろ

発生場所 神戸市中央区下山手通九丁目六番四号先路上

加害車両 亡山田雅雄(以下「亡雅雄」という。)運転の普通常用自動車

神戸五五う二四五九(以下「原告車両」という。)

被害車両 被告運転の軽四貨物自動車

神戸四〇ゆ七九四六(以下「被告車両」という。)

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